ヒトモノカネ。

就活が始まった。

地元・福岡に帰ってきてから、合同企業説明会や会社の個別説明会に参加する日々を送っている。就活はさぞしんどいだろうと思っていたが、始まってみるとそうでもない。むしろ、中小企業の社長の言葉などを直接聞いて感銘を受けたりもした。

 

ま。ただ踊らされているのかもしれない。それに、面接もまだだ。

いまはただ淡々と、企業について腰をすえて調べたり、自分について理解を深めたり、その上でテキパキ行動したいと思う(ていうかなんだ「企業研究」とか「自己分析」とか言葉がゴツいんだよなんかたいそうなことしてそうな雰囲気出すから企業研究ってどうするのどうやればいいの自己分析ってなに禿げそうみたいなことなるんじゃねーの自分のいきたい企業を自分の関心のある観点から比較してウーンドコガイイカナーとか自分はいままで何やってきたかなー特性なんだろうねーとかそれだけだろう息切れ)。納得して就職をしたい。

 

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先日、大名にある古本屋・入江書店に立ち寄った。狭い店内に日焼けした本が天井から床までびっしり陳列されている。

 

おもしろそうな本はないかと棚を凝視していると、『人間をみつめて』というタイトルが目に飛び込んだ。著者は神谷美恵子という。

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(装丁カッコイイ)

 

神谷美恵子は戦前から戦後にかけて「らい病」と向き合った精神科医であるそうだ。この著作よりも『生きがいについて』という本が有名らしい。この本はそれの補完的でもあり、アンチテーゼ的な内容でもあるという。残念ながら、入江書店では『生きがいについて』は取り扱っていないようだったが、また別の機会にこちらの本も購入したいと思う。

 

「第Ⅰ部・人間について」まで読んだ。

本の帯に「心の景色の美しい人」ということばが書かれていたが、まさにその通りだった。心の美しい人だと素直に感じた。それはそれで素敵なことだが、私にはちょっと高嶺の花というか、なかなか人間そんなに綺麗な心では生きられねーよと、感じた。

 

うまく内容をまとめて述べるには時間もかかるのであと回しにするとして、この本は読みやすいし、「人間とは何か」というアポリアに果敢に挑む内容(もっとも、論理的で肉厚な内容を求める人には物足りないと思う)でおもしろいし、制度と「余白」のことについても示唆に富むので、おすすめですよ、と。そんだけ。

 

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赤坂・護国神社前にある工芸店、工藝風向に二度ほどおじゃました。

 

人間の手で直接作られたものは、やっぱりいいなあ。持ったときに感じる「嬉しさ」はなんなのか。使いやすそうだし、無駄がない。それでいてシンプルというんではなく「美しい」。工芸おもしろいな。

 

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(工藝風向にて家族へのプレゼント用と自分用に素敵な小皿を購入。)

 

今日一番感激したのが、漆塗りの什器である。売り物のこの什器の隣にスタッフが7年使用したというこれまた漆塗りの什器が並べてあった。ため息が出た。すごくすごく、深みがあって、綺麗な色をしていた。朱の上に黒を重ねているらしく、スタッフが使ったものは、使っているうちに「黒が透明に近づいて」下地の朱がおだやかに感じられるようになっていた。もし買ったなら、大切に、長く使いたいと思った。

 

使うほどに、変化が楽しめる。

なおかつ、綺麗であると。

 

思うのだ。巷に溢れている環境に配慮したナニガシとかエコなナニガシとか、結局ただの売り文句だろうと。木を使えば、「環境にいいっぽい」とか、実際にいいかどうかなんてはっきりわからないような言葉やものばかり出回っている。似たものとして、フェアトレードとか。どこまで生産者のことまで考えられているのかはっきりわからない。

 

ほんとに環境に配慮するなら、そんなに気張らなくていいのではないか?

自然保護にナン億円とか、だからそういう事がさも「崇高な」ことのように聞こえるのではないか?

 

あの什器のように、「大切に、長く使いたい」と思わせるものを、「大切に、長く使いたい」と思う。そのことが最も素朴で身近なエコだと思う。大量生産、大量消費、似たようなものを作ってすぐ買って、そのツケをどっかのお偉いさんがバカ高い金額で環境保護っぽいことをする。そんな効率悪いことあるかよと。いいモノを、それなりの金額だして長く使う。それは義務ではないしむしろそういったモノは「長く使いたい」と思わせるのだから無理がない。安く安く安く...その向かう先は?

 

大量生産・大量消費によって、職人は職を失ったり自殺を遂げたりもしたらしいが(「職人」なのに「職」がないとは、嫌味だ)、いやいや、今こそこういうものを見直すべきだろう。

 

我々は近代化で何を失った?どこに向かおうとしている?

 

 

就活して、欺瞞に蓋をしてなんとも無いような顔をして働く?

制度と存在の余白、自発性は?

「誠実なモノ」?

 

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主張したいことに、自分の言語運用能力(なんか就活で言われそう)が追いつかず、なんだかごちゃごちゃしてしまった。でも、今述べてきたようなことに大切なことがある気がする。

 

そうそう、工藝風向のお隣にある珈琲店「珈琲美美(びみ)」もこれまたいいお店で。

というか、珈琲は私もそれなりに好きだが、一口目で感激したのは初めてだった。

福岡にはいい店がたくさんあるなあ、と、思った次第。